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「新規参入者を呼び込む」鳥取県智頭町が“山林バンク”を創設

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智頭町で新しく立ち上がった林業団体の式典の様子(撮影:2015年9月)

 イチから自伐型林業に取り組もうとする人にとって、これほどありがたい自治体の支援はないかもしれません。鳥取県智頭町は3月、土地を持っていない自伐型林業家に対して山林の確保を支援する制度「山林バンク」を立ち上げました。

 山林バンクとは、「自伐型林業をやりたいけどフィールドがない」という自伐希望者と、「山を有効活用してほしい」という山の所有者を結びつける制度で、その橋渡し役を町(自治体)が担う制度です。山を提供してくれた山林所有者には、0.1ヘクタールあたり10,000円の謝礼が支払われます。自分で管理できない財産(山)を預け、いくらかの金利(謝礼)をもらうところから「山林バンク」と名付けられています。智頭町役場の担当者によると、3月末日時点で町内外からすでに2件の山林所有者が名乗りを上げているようで、画期的な制度になることは間違いないでしょう。

気になる所有権

 新しく自伐型林業を始めようとする人のうち、もとから山林を所有しているのは一握りの人です。大半の自伐希望者は移住者などの新規参入者で、そこでまずハードルになるのが施業する山林の確保です。山主と直接交渉するためには、地域の中の信頼感や技術の証明など、様々な不確定要素が絡むため、新規参入者にとってはなかなか話が前に進まず頭を抱えるはずです(現ににシンポジウム「自伐がつなぐ林業新時代」に登壇した宮城県石巻市の阿部さんは交渉に2年半かかったと発言)。山主の立場になれば、先祖から受け継いだ山を誰か見知らぬ人に任せるのは抵抗感を感じるのも当然といえるでしょう。

 そこで、地域住民の暮らしに結びついている自治体が仲介することで、お互いの心配事を解決し、スムーズに自伐型林業をはじめてもらおうというわけです。

 メディアも大きく取り上げています。

◎来たれ!若手林業家 民有林の管理あっせん 智頭町が創設(毎日新聞 3.27)
◎自伐型林業家増やせ(読売新聞 3.31)

 しかし、肝心のポイントが抜け落ちています。それは山林の所有権はどこに行くかです。山林バンクに登録すると、その山林の所有権は町に行くのか、自伐型林業家に行くのか、それとも山林所有者のままなのか。細かい話かもしれませんが、大事なポイントです。
 役場担当者によると、大きくわけて2つのパターンにわけられるようです。まず「譲渡ケース」の場合は、山林バンクがいったん山林を取得し、自伐型林業家に山林を譲渡します。山主には「山林提供謝礼」が支払われます。林業者は山林を永続的に管理できるかわりに、納税の義務も発生します。
 また、「立木提供ケース」では、所有権はそれまでの山林所有者のまま。林家と諸湯者が作業をするための協定を結びます。所有者は山林フィールドを提供する代わりに「立木提供謝礼」を町から受け取ります。林業者は山を使わせてもらえるものの、いつかは返す契約になります(智頭町では20年間を想定)。違いはありながら、どちらのケースでも、林業者は山で上げた収入は手元に残せます。「基本的には所有者の判断に任せますが、基本的には林業をしたいという移住・定住者のため施策です。新規参入者が活動しやすいよう支援していきたい」と担当者は制度導入の狙いを振り返ります。

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(資料提供:鳥取県智頭町)

 智頭町は昨年7月に創設した「総合戦略」で、「自伐林家の郷構想(リンク:PDF871KB)」を立ち上げ、1)町有林の無償提供、2)山林バンクの創設、3)自伐型林業家として生活できるスタイルの構築を掲げていました。それが早くも実現することになります。
 自伐型の林業を展開しているグループは、全国で50事業体を超えました。山林を確保できない自伐予備軍も含めると100は超えるのではないでしょうか。研修や作業道補助を支援(予算化)する自治体も10以上にのぼりますが、今後は自治体の仲介の役割も求められてくるかもしれません。(事務局)

【土地の所有権】
土地は基本的には所有権と利用権にわけられ、所有権を持つ人が税金などを負担し山林財産を保有します。山主と協定書を結ぶ場合は、所有権は移さずに利用権を与えられるので(契約にもよる)、たとえ現場で壊れないみちづくりを敷いて素晴らしい山をつくったとしても、所有権がなければいつかはその土地を離れなければなりません。

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