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問題法案が衆院通過 「自伐」重視と環境破壊の矛盾

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 2018年3月に林業に関する重要な法案が国会に出されました。新たな森林管理制度である「森林経営管理法案」です。当協会は法案の提出に先立つ2月5日、この動きを知って提言を出しました。

■今国会で成立を目指す新たな「森林経営管理法案」に対する3つの提言を発表しました。
http://jibatsukyo.com/info/news/1802-teigen

■第一九六回 閣第三八号 森林経営管理法案
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g19605038.htm

 この法案は「林業の成長産業化」という、現在の至上命題(官邸および農水省主導)を実現するために、大型化した“川下”木材産業(CLT等の集成材やバイオマス発電等)へ向けて、大量の原料を安定的に供給する新たな仕組みを作るための法案です。林業を推進する軸足を、林業者が仕事をする“川上”側ではなく大型“川下”木材産業に求めているもの。法案の中身を読み込めば、持続可能な山林をつくる「自伐林家」および「自伐型林家」を視野に入れられていないとわかるものでした。

 新たな法案は、樹齢50年を「主伐期」と位置づけ、森林所有者に「主伐(皆伐)させ、造林及び保育をさせる」ことを義務化するもので、樹種や地域によって異なる伐期を無視し、長伐期多間伐による山づくりを目指そうとする考えとは異なるものでした。今国会に参考人として立った研究者からは、憲法の保障する「財産権」や「営業の自由」の侵害の可能性も指摘されるほど、今後の森林づくりに影響力の大きい法案です。


(全国で広がる「主伐」/撮影場所:高知県東部)

 この間、当協会は研究者やジャーナリストらの協力を得ながら、提言の作成と発表(2月5日)、国会議員による「自伐型林業普及推進議員連盟」への説明・提案、超党派の国会議員への個別説明、衆議院農林水産委員会の傍聴など、国会を中心に活動をしてきました。現在は参議院で審議入りし、4月23日には代表理事と事務局長が参議院議員会館にて、これまで衆議院で交わされてきた経過を参院議員へ説明し、意見交換をしました。

環境破壊への懸念と「自伐林家」と「自伐型林家」に期待する声

 国会論戦のピークは4月11日からの農林水産委員会でした。特に12日の参考人発言では、質疑が活発になりました。参考人質疑に立った4人のうち、3人は同法案に期待の声を寄せ、反対したのは一人だけでした。「いったん廃案にすべき」と発言したのは泉英二愛媛大学名誉教授でした。


(農林水産委員会の模様/衆議院ネット中継より)

 それを受けて開かれた17日の農水委員会では、泉教授の発言を用いた質問が相次ぎました。また、制度の対象となる林業者について質問する議員が多く、小島敏文議員(自由民主党)、大河原雅子議員(立憲民主党・市民クラブ)、亀井亜紀子議員(立憲民主党・市民クラブ)、金子恵美議員(無所属の会)、緑川貴士議員(希望の党・無所属クラブ)、田村貴昭議員(日本共産党)といった超党派の議員が、「自伐林家」および「自伐型林業」との言葉を用いて、制度の対象に入れるよう発言しました。そして、対する政府側の答弁で、斎藤健農水大臣はこう語りました。
 「自伐林家を始め、自伐型林業など地域で活躍する小規模な林業経営者の皆様におかれましても、 経営拡大意欲とかありますれば、この経営管理実施権の設定を積極的に引き受けて、地域の森林・林業を支えていただきたいとぜひ考えているところでございます」。
 野中大臣政務官からも同様の発言がありました。

■農林水産委員会(2018年4月17日 衆議院アーカイブ)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=48039&media_type=fp

反応するメディア 次のステージは「良識の府」参議院へ

 提言提出から2ヶ月経ち、残念ながら衆議院では「森林経営管理法案」が通過しました。次のステージは参議院に移ります。
 2週間ほど国会対策に集中して動いた結果、衆議院では「自伐林家」に加えて、初めて「自伐型林家」という言葉が国会で使われ、多くの国会議員から「重要な役割を担っている」との発言が出ました。法案に対して国会議員が意見をまとめる「附帯(ふたい)決議」の第13項目には「自伐林家や所有者から長期的に施業を任されている自伐型林家等は、地域林業の活性化や山村振興を図る上で極めて重要な主体の一つであることから、自伐林家等が実施する森林管理や森林資源の利用の取組等に対し、更なる支援を行うこと」と明記されています。法的拘束力のない「附帯決議」ではありますが、自民党も含めた超党派議員が意見をまとめたものであり、参議院の結果次第では、法律に一定の歯止めをかけるきっかけになります。
 農林水産委員会では会員からにヒアリングした内容を発言する議員もいました。先の農水大臣の発言は、「今回の制度によって、小規模林業、自伐型の林業がきちんと持続できるように、こちらにも目配りをしていくということを大臣から一言御発言いただきたい」と迫った亀井亜紀子議員に対する回答でした。島根県津和野町の自伐型林業グループ「ヤモリーズ」に聞き取りをした上で団体名を上げて質問していました。
 全国の自伐型林業の実践者と、当協会事務局の働きかけが噛み合い、国会に一石を投じる動きにつながりました。
 さらに、2月提言や当協会が執筆した雑誌『季刊地域』でも触れた、法案のもととなるアンケート結果についてもメディアが問題視し、議論はさらに広がりを見せています。

■「データ捏造」疑惑が浮上した森林環境税関連法 モリカケ追及の裏であっさり衆院通過(AERA.dot)
https://dot.asahi.com/dot/2018042300003.html

今後、続報をお届けします。

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